●隅田川

「春のうららのすみだがわ〜、上り下りの〜」
そんな長閑な春が今年はちょっとしかなかったような気がする。
滝廉太郎によって美しく長閑に形容された隅田川。
江戸の町をゆるやかに流れてい景色が目に浮かぶ。
現在では背の高いビル郡の合間を抜ける川になっている。
しかし、今でも春のこもれびをあび流れる川は長閑にその面影を保っている。

まだ冷たい風が流れるある日、引っ越したばかりの私は近所を散策していた。
小さな駅の前にあるお菓子屋でパンとジュースと少しの駄菓子を買い、河川敷に向かった。
階段があり、スロープがある。石段のおしゃれなベンチにちょっとした噴水。
向こうでは高校生がスケボーを楽しんでいる。反対側では年配の男性が犬の散歩をしている。
川の辺りを見渡すと、左には首都高、右には遠くに橋を渡る電車が二本見える。
徐々に大きくなる材木を運搬する船が視線に入ってくる。

私の家の近くにこんないい場所があったとは、、、
とても嬉しい気分で満ち溢れ、いっぺんにこの場所がお気に入りになった。

しばらくその場に座り、物思いにふけりながら周りを囲むビル郡を見渡している。
すると私の中に一つの懐かしい思いが込み上げてきた。

私の中学校の修学旅行は東京だった。
箱根→鎌倉→東京の二泊三日である。
東京でのコースはいくつかあった。その一つに隅田川下りというものがあった。
私はその隅田川下りを希望したのだが、あみだくじによって外れてしまった。
結局行ったところは池袋のサンシャイン60だった。
東京に住んでいる今となっては何も面白くないところである。
しかも、当時は日本一ノッポビルだったが、今では二位でもない。
ある意味隅田川下りはその頃の思い出の一つだった。
その隅田川が今目の前に流れていた。

私は最近、ある愛奴と共に隅田川水上バスに乗った。
中学の時の思い出の実現である。
浜松町から日の出埠頭へ、、、
夕方の日の入りと聳え立つビルの夜景をお目当てに時間を合わせていった。
船の中は人はかなり少なかった。いたるところでカップルがいちゃついていた。
ビールを片手にしている人もいる。
出発して間もなくレインボーブリッジのネオンが見える。
水面とを西日が照らす。
港区のビル郡が、、、
電飾の飾られた橋が、、、

愛奴の腰に手を当て、浅草までの40分があっという間に過ぎて行った。
中学の頃の思いが実現した時でもあった。

中学の時、もし水上バスに乗っていたなら。私はどういう感想を抱いただろう。
今日と同じ感想だったのだろうか?
そんなはずはないだろう。更に言えば同じ場所でも年により時間により、はたまた 他の要因により同じことを感じないだろう。
なんだか不思議な感じになった。いろいろ考えさせられた。
そんな水上バスだった。

みなさんにはどんな思い出がありますか?
今日は寝る前にちょっと思い浮かべてみてはどうだろう。

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